これは小説?詩?音楽?なにかの記録?
誰も見たこともない、聞いたこともない言葉たちから生まれる幻視世界にあなたは入って来られるのでしょうか。
『もう崩壊しそうになっていて、崩壊が進んでいる』
建築現場で働く主人公は次々と目の前に展開する世界の中に生きています。
ぜひついてきてください。
次の瞬間、あなたが見ているものは変化を始めていますから。
スタッフのおすすめ
ごく普通の銀行員である主人公はある日の朝、勝手に部屋に入ってきた男たちに逮捕されます。
しかしなぜ逮捕されたのか全く身に覚えがありません。
次々と登場する不可解な人物と場所に、読者は常に首を捻らないわけにはいきません。
不条理に満ちた現代を風刺しているようにも見えますが、そんな中にもついクスッと笑ってしまう場面だってあります。
不条理も行き着くところまで行けばおかしみがあるのかもしれません。
いわゆる小説論ですが、小説論の形をした小説として読むことができます。
著者がおもしろいと思う小説を紹介しながら、小説について考え続ける一冊。
「小説とは何か?」をここまで長い年月をかけて考えている著者には、小説に対する愛情や敬意、時には絶望や幸福など様々な感情が生まれているのではないでしょうか。
思い浮かんだ言葉をそのままの形で発散すると、小説は今までとは違った形になるのでは。
1ページ目を読んだとき、あなたは何かおかしなところに気づくはず。
様々な場面に展開されていく著書の中には、著者が小説という既存の概念に立ち向かっていく「闘争」が描かれています。
控えめにいって、すごく「闘争」しています。
童話作家、宮沢賢治の24の作品を、著者が原題のまま用いて現代に再起動。
『風の又三郎』や『注文の多い料理店』などの名作を練りに練られた文体で改変しています。
ちょっとドキッとする表紙の絵も魅力的です。
現代の〝ミヤザワケンジ〟が送る、世界について問いかけ続ける物語集。
どんな壁も全て超えてあなたが好き。
こんなに強く惹かれ合う気持ちが恋でないなら、一体何を恋愛と呼ぶのか。
「生のみ生のままで」を、ありのままでいる、という意味で受け取るなら、好きって気持ちをありのまま受けとめることなのだろうか。
それって簡単なようですごく難しい。
普通という名の偏見。
無自覚な差別。
世界はどうしてこんなに生きづらくできているのだろう。
あなたが好き。それだけじゃ駄目なの?
医師には医師の事情があるように、患者には患者の事情があるようです。
「医者からこう言われたことあるな」とか「こういうこともあるんだな」と思って何となく読んでいると、ひっくり返されます。
医療の闇をさらっと掬い、適度な後味の悪さを添えたような短編集です。
これぞ医療幻想の終末。
明るい希望に溢れた光の医療小説にはそろそろ飽きてきた、という方におすすめします。
人をみんな同じものさしではかることはできないはずなのに、クラスという小さな社会の枠に嵌れなかったら弾き出される。学校というのは、案外容赦のない社会的集団だ。
クラスに適応するため、みんなと一緒に変わり者の女の子を無視するのも、夜な夜な化け物になり、その女の子の夜休みに付き合うのも自分だ。
本当の自分は誰で、どこにいるのだろう。
人生の最期を、きれいごとは抜きにして考えてみませんか。
自然に任せる、とか、尊厳のある死とは一体どういうことか。その患者さんにとって最も全人的な医療とは何か。主人公と、周囲の病院スタッフたちの価値観の違いは決して間違っているものではなく、これが医療の現実なのだと分かります。
とくに高齢者をとりまく医療の在り方というのは、今後大きな課題になっていきます。
この本を読むと、「自分はどうしたいかな」と考えるきっかけになるかもしれません。
これは異形の愛情。
でも、その本質は激しくて純粋な気持ち。
愛情は、優しく、しっかりと、それでいて僅かな毒すら含んで広がっていきます。
分かり合えないものを排除するのは簡単なことです。
でも、ここにあるのは愛の多様性そのもの。
ひとつの枠に簡単に嵌めることのできない、もっと複雑で、形容し難いなにか、なのです。
この本を開けば幻想的な世界観の中で、「愛情」という私たち人間の背負った難解な感情の深淵に触れることができると思います。